春頃から読んでいた1Q84(文庫版全6冊)を読み終えたので、感想を書いておこうと思う。
まず、とてもキレイに終わったということが意外だった。
物語は常に不穏な空気が漂っていて、主人公のふたりは禄でもない最期を迎えるという予感があった。
結果、ふたりの背負ってきた数々の業は、ある人物がひとりで全て引き受けてくれた。
そのために配置されたキャラクターだとすると、あまりにも救いがない気もするが。
カルト宗教のことが細かく描写されているのは面白かった(おそらくオウム真理教やエホバの証人が元ネタ)。
今回、読み始める前に世間では統一教会が大問題になっていたので、そういう意味でも興味を引かれた。
おそらく、アンダーグラウンドというノンフィクション作品が屋台骨になっているのではないかと思う。
以前、分厚い文庫本を読んだが、村上春樹は早くから宗教問題に着目していた。
主人公のひとりは殺し屋で、しかも女性という、これまでの村上作品の中では異色の設定。
一見共感しづらそうだが、青豆の素顔や人間性の描写を読み進めると、次第に彼女に惹かれていった。
ふかえりの人智を超えた不思議ちゃん感も、すごく可愛くて惹かれるのだけど。
不思議と言えば、結局NHKの集金人の正体は謎のままだった。
私が過去、実際に出会った集金人の方もかなり強烈なインパクトがあって、ドアを開けたことを後悔した。
なので作品のドアの向こうにも同じ人物像をイメージしていた、天吾の父親にも。
柳屋敷の老婦人、さきがけのリーダー、元レンジャー、どの人物もキャラクターが立っていた。
月が二つあるハードボイルドな世界、ローファンタジーとして、恋愛ものとして、非常に楽しめた。
読み終えて、村上作品の中でも、1、2を競うくらい好きな作品のひとつになった。
以下、余談。
私がこの作品と出合ったのは今から11年前、文庫本の第1巻、BOOK1前編をたしか発売時に購入した。
青豆が高速道路の非常階段を下りたあたりで中断していた、それ以上読むことはなかった。
2012年当時、私はクルマとカメラに夢中で、落ち着いて読書をするような習慣がなかったのだ。
では何故本書を買ったのか?、”村上春樹の新刊が出た”という理由だけで買ったような気がする。
学生時代に村上春樹に傾倒していたことはあるが、1Q84を購入したのはミーハーな理由だ。
ともかく、以来11年間、本棚の片隅に文庫本の最初の1巻だけがある状態が続いた。
その後、コロナ禍で読書する習慣ができて、氏のエッセイ本を数多く読むことになる。
村上春樹の小説を久しぶりに読んだのは昨年の4月、映画「ドライブ・マイ・カー」がきっかけだった。
それ以降、時をさかのぼって空白を埋めるように、直近10年間の作品を読み始めた。
女のいない男たち、騎士団長殺し、色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年、一人称単数。
そして11年の時を経て、再び1Q84に辿り着いた。
気が付けばこの1年半、ずっと村上春樹を読んでいる。
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