アカデミー賞の数日前に、映画「ドライブ・マイ・カー」をプライムビデオで観賞した。
「喪失」がテーマになっていて、妻を失った男性の悲哀が描かれている。
映像作品だけど、とても文学的というか、村上春樹らしさにあふれる映画だった。
不思議な余韻の残る作品で、3時間の間に何度か涙が出た。
岡田将生氏はすごい俳優になったと思う。
2年前にNHKの「タリオ 復讐代行の2人」というドラマを観ていて感心したのだけど、今回も名演だった。
ベビーフェイスなのに、この人はヒールというか、ちょっと問題のある役が映える。
映画は「女のいない男たち」という短編集の内、3つの物語を結合させた話だということが分かった。
元々、後から原作を読んで違いを楽しむつもりだったけど、他の2つの物語をますます読みたくなった。
「ドライブ・マイ・カー」、「シェエラザード」、「木野」の3つのエピソードが映画の骨格になっている。
全6篇のオムニバス、個人的には 「木野」 のエピソードが一番好みだった。
呪われたバーテンダーの話、BARで読書をする客が登場するのだが、そんなこと考えたこともなかった。
喫茶店で煙草を吸えなくなって以来、コンビニのコーヒーを片手に、もっぱら公園のベンチで読書している。
BARで読書!?そのスタイルがアリなら、いつか自分も実践してみようと思う。
どのエピソードも共感して引き込まれた、女のいない男たちの深い喪失は自分なりに理解できる。
年齢を重ねると恋愛に臆病になる、それでも本人の意思と関係なく、心を惹かれてしまうことはある。
そして、恋に落ちた瞬間から彼女を失うことを考える、それは何の前触れもなく、ある日突然やってくる。
悲しむべき時にきちんと悲しまなくてはならない、泣くべき時にきちんと泣かなくてはならない。
困難でも、面倒くさくても、それを怠ると孤独という牢獄に囚われてしまうことになる。
コロナ禍になって、憑りつかれたようにエッセイばかり読んでいた。
パンデミックや戦争、現実がフィクションを超越してしまい、小説が色褪せて見えたから。
しかし、この短編集の6つの物語は私の奥深いところに届いて、そっと慰めてくれた。
新品価格 |