四畳半神話大系の森見登美彦氏の短篇集。
深夜特急の3巻を読み終えた頃、少し趣きを変えてみたいと思い、本屋に足を運んだ。
四畳半神話大系の横に収まっていた本作を手に取って巻頭を読んでみると、なかなか面白そうな内容だった。
近代文学の文豪たちの名作を、森見氏が現代風に置き換え、アレンジして書き直すというものだ。
元になっている作品は5つ。
・山月記(中島敦)
・藪の中(芥川龍之介)
・走れメロス(太宰治)
・桜の森の満開の下(坂口安吾)
・百物語(森鴎外)
山月記は「創作する遺伝子」で紹介されていたこともあり、一度読んでおきたかった。
虎になった男の話、本作ではアレンジされているが、出会いはどんなカタチでも良いと思う。
5篇に共通しているのは、舞台が京都の町で登場人物たちが大学生だというところ。
今時の「party people」ではなく、四畳半のボロアパートに暮らす、前時代的なつましい世界観。
酒と煙草と麻雀に明け暮れる、愛すべき腐れ大学生たちの物語。
4番目の話「桜の森の満開の下」を読んでいるとき、学生時代の思い出がフラッシュバックした。
確かに掴んでいた大切な何かを取り戻そうとしても、もうその在処が分からないという一節。
基本的に恋愛モノに手を出すことはないので、とても新鮮に映った。
全篇を通して賑やかで楽しい5つの物語、我ながら良い本に出会えたと感心している。
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